俺ならこう撮る

映画監督・プロデューサー越坂康史の「もしも」の偏愛的映画感想と日常。
「永遠の0」もともとファミレスのハンバーグ定食を目指しているわけだから
朝の食卓で「ちゃんと水道代払ってる?」なんて言われている監督と商業映画を次々にヒットさせる監督の違いは何か?それはファミレスのランチのハンバーグ定食が上手に作れるかということだと思う。誰もが美味しいと言える味。
そういう面でいうと山崎監督+Robotほどの実力を持ったチームはいないと思う。
ちょっと嫌みな書き方に見えるかも知れないけど、興行を引っ張っていく作品は必要なのだ。

しかしながら、昔、岡本喜八監督が東宝の戦争大作撮った後に自費を投じて、「肉弾」撮りたくなる気持ちがわかった。
山崎監督は自分の撮りたいものとかないのだろうか。それともあれがフィットして楽しいのだろうか。

本作を見て、最初に感じたのは、じれったいな、ということであった。
綺麗に回想順に主人公の状況が明らかになっていく。
三浦さん吹石さんコンビの芝居が岡田准一さんよりヘタレなのではなくて、推理する必要がないからキャラの魅力を作れない。構造的欠陥なのだ。だって吹石さんなんて三浦さんの会話相手にすぎない。
誰かに会ったらヒントをもらえて進んでいく。ノベルゲームのよう。結果は宣伝でネタバレしているわけで驚きはなく、最後にやっぱりそう戻ってくるかと。戦中は上映時間の半分しかないから予算の倹約にもなるのか、と邪推する。

戦中陣のキャストメンバーは若手を含め、なかなかの絶品ではあった気がする。ここでの問題点は、岡田さんの、特攻教官になってから狼狽している姿である。ここさえ、インパクトを持って描ければ他は些細な問題だと思う。
元々なんであんな戦略に詳しい設定なのかとか、何で腕が立つのか、当時のムードに違った意見が言えるのか、なんてまったく説明ないけど許せちゃう。
そこで狂った姿が見られるのかと思ったら、「あれが特攻だ」みたいに冷静に分析、受け止めているではないか。この感覚を持っていてああいう風に変化していくのがどうしても腑に落ちないのである。

そう、それで思った。これは誰も傷つかないように作っている映画なんだと。「ALWAYS」のように悪者はおらず、岡田さんを叱責する鬼上官もいないのだ。ま、これは少しだけ描写はあるが、もちろん「肉弾」とかに出てくる上官から比べればかなりのヘタレ上官である。赤城もVFXも素晴らしいが、そこに乗っているメンバーたちの葛藤は、こちらが受け止めて心動かされるほど強くない。それは、強い悪役がいないから映画が強くならないのである。

正直に言えば、僕は井上真央さんと岡田さんがラブラブで「約束ですよ」とか言っているより、お互いすれ違いなどで別れて、あの状況になった方が泣ける。これこそが逆に「肉弾」などでは描けない新機軸だと思ってしまう。

ファミレスのランチのハンバーグ定食はたまに食べたくなる味だ。しかし、それで「うまい」と感動することはない。ぜいたくいえば、そこに何か一品、ぼくらが喜びそうなデザートをつけていただけたらと思う。そうすれば、戦争映画初心者も喜び、僕らも楽しめる。商業映画はそこを目指すべきなのだと心から思う。
 
【2014.01.08 Wednesday 00:52】 author : koshiy2010 | 日本映画2013 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
「おしん」結構しあわせな気が
いゃあ、稲垣吾郎さんが稲垣さんらしさを排した芝居でよかったです。キムタクがキムタクらしさを強調しているのとは逆の路線にベクトルを切ったということでしょうか。
テレビ版を見てなくて「レ・ミゼラブル」くらいひどいことになるのかと思ったら、結構幸せじゃないですか。特にストーリーが圧縮されているからそう見えるのか。おしんまわりで、不幸せエピソードがもう少しないと、わたしとしてはこないなぁ。
しかしながら、働くということへの意識の高さは身に包まされる思い。「女は、自分のためじゃなく働く」という旨のセリフがありますが、一般民衆にしてみれば、これは男でも同じ。
【2013.11.16 Saturday 15:15】 author : koshiy2010 | 日本映画2013 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
「許されざる者」悪くはないけど物足りない
仕事が大変忙しくてごぶさたまんもすです。
今もやらなきゃいけないことはあれど、ちょっとこれだけは書かせてください。
「許されざる者」です。
前作にそれほど愛情を持っていない私としましては、日本版はむしろ、それをカバーしてくれるものかも知れないという期待もありましての鑑賞です。
て゛、最近よくあるのですが、見た瞬間は満足、後に、だんだん腹が立ってくる。
うーん、いかんいかん。だってインデペンデントでがんばっているオフィスシロウズさん制作プロダクションですよ。
ワーナーと組んでの大作ですよ、応援しなきゃ。

なので、愛のあるダメだしとして聞いてください。しかも、完成しないとわかんないことはいつものように棚上げです。

さて、李相日監督の「フラガール」を見た時に、違和感を感じたのですが、その時は同じ炭鉱ものの「にあんちゃん」を見て、この泥臭さや空気感がないのがその原因だと感じたくらいで、それ以上追求しませんでした。
今回もその違和感があるのです。で、わかったのですが、それは弱者への視線のディティールです。「にあんちゃん」に妹の教科書を買えない兄がふてくされて映画館に行ってしまおうとする描写があります。「映画館行けるお金があるなら」とたしなめられます。こういう人の変な弱さ・ずるさのようなものがない。
ここに出てくる弱者といえば、女郎たちとなるのですが、女郎という記号に安住してしまい、その過酷さを描く事がないせいか、復讐、権力への反逆のエネルギーが現れてこないのです。これが三池監督の「十三人の刺客」ではそこまでするか的な残酷な描写があるから、エンジンがかかります。

脱線しますが、最近、親のクルマを壊してしまいまして、その壊れたクルマを保管していた整備工場から税抜きで25000円の駐車代の請求が来ております。聞くと1日5000円だと言います。ですが、クルマを壊した瞬間に人には、保険やクルマ本体のことで頭がいっぱいで1日5000円の駐車代なんてそれから比べれば微々たる問題なわけでその瞬間はスルーしてしまいます。「わかりました」と言ってしまいます。
でも、あとから請求が来た時に、整備工場の駐車場がある武蔵小杉からクルマで5分も行かなきゃいけない場所に保管してて、1日5000円って何だよと思うわけです。うちの近所なら1200円打ち切りで24時間停められると。
今で言えばこんなことに近い感覚で、それを仕切る人の言う事にのせられて、この女郎たちは連れてこられたんだと思うんです。
この作品と「フラガール」に足りないのは、こういう感覚ではなかろうかと思うのです。

渡辺謙が植えた食物のひとつが実をつけていない=貧乏描写しました
土から思い出の品引っ張り出す=過去の自分を思い出しました
酒を飲む=完全復活
みたいなものに、映画を見慣れている人は何の驚きも感じません。
こういうものは積み重ねてもっと丁寧にやらなきゃいけないんじゃなかろうか。
さらに
女性の顔に傷つける=頭だとテレビに売りにくいから回想にしておこう
なのでしょうか、
破滅の美学は最近描かれないので賛同しますけど、なぜ、ここまでアイデアを出さなきゃ行けない所、エッジの効く所を避けなければいけないのか。

私たちはこの映画に出てくるキャラクターに「許されざる者」になって欲しいと願っているのに、遠くなっていきます。
こんなことを考えて、腹が立ってきてしまうのです。

 
【2013.10.12 Saturday 01:34】 author : koshiy2010 | 日本映画2013 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
「風たちぬ」70を過ぎても我々を驚かせ続ける
監督はもともとは「もののけ姫」で引退をほのめかしていました。
それにふさわしい傑作だし、今でも監督作の中で一番好きなのですが、ここにきて「風たちぬ」という傑作を生み出してしまう。おそるべし。

ここではあまりみなさんが触れていないことを書きたいと思います。

ご存知の通り、夏というのは、映画興行においては稼ぎ時なのです。そしてかつて(80年代くらい)は「戦争もの」がここにぶつけられてなかなかの稼ぎ頭だったのです。
そうか、ジブリで、戦争もので、夏公開なら、これは鉄板ですよね。
今映画映像業界は、厳しい闘いを強いられています。DVDレンタル稼働の低下が大きな原因と考えられますが、ジブリでさえ、今年は2本公開。90年代終りから2000年初頭は2年に1本作っていれば経営できていたものが、そうやらなければ食えないってことなんだろうと推測するわけです。その2本が、宮崎監督と高畑監督というのもあとがない感がばしばし伝わってきます。
つまりできれば100億を超える作品が2本、日本の映画興行に欲しいってことなんですよ。

とはいえ、アートの観点から言うと、ジブリに松本零士みたいな作品はあわないわけで、そんな中でどういう作品をつくるのかが興味でした。
「もののけ」の時は、日本の社会システムが確立したとされる室町時代頃を背景に、要は文明が近代化していく中での人間の矛盾が描かれていたと思いますが、今回はそんなに哲学的ではなく、もう少し身近な人間を描こうとしたのだと思います。
ファンタジーの武器をあまり持たない人間ドラマ系スタートの監督・作家にとっては至極当たり前のことが、ファンタジーの武器を持っているがゆえに封印されていたわけです。
そこのアニメらしくない所にいまさら挑戦するというのがなかなかどうして、ぼくにとっては感動的なわけでして、70という歳を過ぎて、今までと違うやり方に挑戦している。
そして、そこで描かれているのも社会と人間の真っ当な矛盾。主人公は馬鹿なふりして零戦をつくるわけだけど、ここに描かれない部分で論議を呼びたい気持ちは伝わってきますね。
さて、みなさんはどう見ますか。
 
【2013.09.02 Monday 22:54】 author : koshiy2010 | 日本映画2013 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
隠れたヒット
当たっているようです。



劇場用とはいえ、Vシネ予算枠だろうから。
初ヌードじゃないし、ストーリーが新しいわけでもないから不思議。

【2013.07.20 Saturday 16:23】 author : koshiy2010 | 日本映画2013 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
「藁の盾」カンヌで酷評されようと応援しますよ ほか
いやあ、気がついたら、1ヵ月近く放置しているやん。

取り急ぎ、「マンハンティング」シリーズや「ミッシング55」などに出ていただいた吉沢眞人さんが車掌役やっている「藁の盾」は、カンヌで酷評されようと応援します。

いい所
・台湾シーンが違和感ない。
 以前、「魍魎の匣」が中国ロケやって、なかなか違和感あったから。
・意外と松嶋菜々子さんがかっこいい。
・松嶋さんのセリフがミスリードを狙っていて、手軽に状況を混乱できる。勉強になった。
・岸谷さん、伊武さんは悪役もありえるから、キャスティングとして絶品。
・こういう役の藤原さんはやはり見たいよね。

悪い所
・瀕死の永山絢斗さんを新幹線に残すのはどうかと。

他ひとことですいません。

「L.A.ギャングストーリー」
「アンタッチャブル」まで期待しなければ悪くない。悪役ショーン・ペンはいいよね。
作戦らしい作戦がないのですが、だんだんどうでもよくなってくる。
あ、渋谷東急終わりなんだって。

「死霊のはらわた」
実はあろうことか、オリジナルの1作目を見てないのさ。
いやぁ、あっていい映画。徹底的にやってくれた方がすっきりする。
オリジナルも見ます。

「ヒステリア」
いやぁ、こういう民俗史みたいの好きなんですよ。
科学的でない医学の時代に科学的主張をしていた主人公が
結局は科学からは一見遠そうな医療マッサージの世界に足を踏み入れて
そこで成功するというのが面白い。

「名探偵コナン 絶海の探偵」
難しすぎる。
評判はいいけど、子どもはこれで満足なのかしら?
うーん、僕はやはり、コナンが走り回って爆弾止める映画が見たいんですよね。
国防でもいいけど、アニメなんだから無理に会話劇の面白さで戦うことはないと思うんですよ。あと、通信機器が重要な役割をするんですが、設定が苦しくないかなぁ。盗聴しててもおかしくない気がするし。

「ガレキとラジオ」
とにかくあの状態で笑顔で戦う姿が心に残る。
ただ途中、リーダーがバイトで失踪しちゃうのが、やらせとはいわないけど、
構成上の盛り上げとしてあざとさは感じてしまう。
あの通りだったらあまりに責任感ないし、ドキュメンタリーとしては話をもっと
聞くべきだと思うのです。
 
【2013.05.23 Thursday 23:23】 author : koshiy2010 | 日本映画2013 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
「プラチナデータ」テーマをセリフで言う病は蔓延中 ほか
ほんとにいいたいんだけど、娯楽映画としてがんばってて素晴らしいし、主役クラスは言い尽くされているので割愛して、遠藤要さんや和田聰宏さん、萩原聖人さん、そして鈴木保奈美さんのキャスティングはセンスを感じる。プロダクションIGのディスプレイアニメもいい。
前半の監視カメラの追っかけ、特に品川駅前は絶品だ。
なのに、なぜテーマをセリフで言う病に気づかないのか。もったいないなぁ。
個人的には監視社会の怖さが残る作品にして欲しかったし、犯人はもっと狂っていて欲しかった。「悪役が強いと映画も強くなる」byロジャー・コーマンを胸に刻んで欲しいかしら。

「舟を編む」も。
まずは、お金を生み出さない事業部が維持できてた時代があったことに驚く。
コツコツやって何らかに結びつく、これは日本人は好きだわ。元気になれる映画。
でも、あの時代において、あの恋愛観はやはり過去の幻ですよね。
 
【2013.04.26 Friday 16:03】 author : koshiy2010 | 日本映画2013 | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
「ガレキとラジオ」号泣必至、ただ…
被災者にも関わらず、みんなを元気にしようとがんばっている姿に号泣必至で、かなりウルウルさせられる映画だった。
ただ、途中、リーダーが不在になり、病気か?みたいなシーンがあるのだけど、これをどう見たらいいかわからない。結局、バイトしていた、月給12万円じゃ責められない、みたいな流れで落ち着かせる。これは、ドキュメンタリーとしての盛り上がりをつくるための編集か、みたいに邪推してしまう。それとも、この国のリーダーに対するメタファーなのかしらと。
どちらにしても、俺だったらもっと深く突っ込みたくなるなぁとは思いました。
泣きたい人にはおすすめです。
 
【2013.04.20 Saturday 13:10】 author : koshiy2010 | 日本映画2013 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
「暗闇から手をのばせ」小泉麻耶さんのフェラ顔に一票
予告が面白かったので。
小泉麻耶さんは潜在需要がある俳優さんだと思っていましたが、「並野容子」みたいなVシネの端役あたりに位置づけられちゃって口惜しかったんです。だから今回の抜擢は嬉しいです。
ただ、ネタは興味深いにも関わらず、作品としては以下の部分が失敗しています。
・モロさんとの面会シーンでテーマ的なことを話しちゃう
 ホーキングさんが話すのは受け入れられるんだけど、小泉さんが話すのはないよね。
 観客は想像したいので。
・海への旅で港に行っちゃう
 普通砂浜でないかしら。ご都合を感じるし、その前のトラックに交渉しているのも不自然。
 「○○海岸に行きたいんですが、通りませんか?」みたいなセリフにすればいいのに。
・小泉さんが恋しているってこと?
 そういうステレオタイプで見るのはいいかわかりませんが、彼だけにこだわるエンジンは感じられない。何より小泉さんの暗闇を見たかった。
芝居的には、待機しているクルマによく画が戻るんですが、まとめて撮っているのが芝居的にわかっちゃう。
これを見ると比べちゃいけないけど「世界にひとつだけのプレイブック」がいかにうまくやっているかわかりました。
でも、小泉さんのギリギリヌードの自然さやフェラ顔は記憶のお持ち帰りにしたいです。
また、ドキュメンタリー的な撮影でカットバックをしないし、真摯的な作品だとは思いました。
 
【2013.04.13 Saturday 13:21】 author : koshiy2010 | 日本映画2013 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
「相棒シリーズ X DAY」贔屓せず傑作
何度かお話ししたかと思いますが、監督の橋本一さんは学校の同級生。これまでは多少身内贔屓で褒めたたえていたような所も正直ありました。
しかし今回の「X DAY」は正真正銘の傑作になっています。これはびっくり。だってスピンオフだし。危なくスルーするところでした。
何ともいえないユーモラスなやりとりとアクションは絶好調。だけど素晴らしいのは、別所哲也さんの「また想定外だったって言えばいいんですよ」をはじめとした皮肉なセリフの数々。全国公開映画で「学校に原発ができる日」と同じようなベクトルのブラックユーモアのあるセリフを聞けるとは思わなかった。
よく、「この腐りきった日本を変える」みたいな悪役が出て来る映画がありますが、政府批判をするばかりで、それに踊らされる国民批判はしないわけです。しても抽象的。
これを現代日本人に通じる形でしている所が素晴らしいです。おすすめ。
 

【2013.04.13 Saturday 13:03】 author : koshiy2010 | 日本映画2013 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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